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農政・農協ニュース

危機感のこもる決意表明で秋の運動が始動
―― JAグループが農業政策確立緊急全国集会(8月27日)
 政府の概算要求を前にJA全中は8月27日、農業政策確立緊急全国代表者集会を開き、農業関係予算の確保をはじめ品目政策や経営政策の課題実現を求めるJAグループの運動を始動させた。決意表明では新潟・JA北越後の嶋津一男組合長が「(地域経済を担う)水田農業はいま、爆弾を抱え、地域社会の崩壊へ向けて走っている」とし、またJA全青協の谷則男委員長は「(自給率が40%に落ち込んで)日本農業の60%は崩壊した」と、それぞれ強い危機感で現状をつき、これを突破する秋の運動の緊迫性を訴えた。
 集会は東京・日比谷公会堂に全国からJA組合員・職員の代表約2000人が参加。武部勤農相と与党議員約80人も出席した。

集落や地域全体の認知を得た多様な担い手の育成こそ必要

 決意表明では嶋津組合長が「いろいろと新しい制度が打ち出されるが、すぐに制度疲労を起こして救急車で病院へ運び込まれるような形が今の実態だ。一方でミニマムアクセス米だけが一人笑いして輸入されている」と指摘。
 さらに「そんな中で、我々は水田農業の崩壊を阻止するために、また自給率向上へ向けた新しい取り組みを進めている。経営政策では、集落や地域全体の認知を得た意欲ある多様な担い手の育成こそ必要だと考えている」と述べた。

セーフガードの本発動を――生産コスト削減の実現には4年かかる

 次いでJA鳥取西部の山西組合長は「白ネギを中心に周年栽培を拡大し、平成10年の販売額は45億円に増えたが、その後、中国からの輸入急増で、昨年は27億円に落ち込んだ。今生産コスト削減に取り組んでいるが、実現までには4年かかる。だがセーフガードの暫定措置はわずか200日だ。なんとしても本発動をお願いしたい」と切々と訴えた。

子どもたちが自信と誇りをもてる農業を

 さらに谷委員長は「食料難の時代に親や祖父母は、平地だけでなく山をも切り拓くなどして日本の食料増産に尽くしたという誇りと自信を持っている。だからそれを受け継いだ我々の願いは経営を安定させるとかもっと、もうけたいといった単純なものではない。21世紀は、われわれの子どもが、もう一度、誇りと自信を取り戻して農業をやっていけるようにしたい。構造改革で、それができるならば、我々は先頭に立って血を流してでも改革の先頭に立ちたい」と決意を表明した。

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 このあと、集会は「14年度農業関係予算の確保と農業政策の確立」を力強く決議した。その内容は
▽現行の品目対策を基本において、担い手の経営全体の所得安定をはかる新たな経営所得安定対策の確立
▽水田農業の将来方向の明示と、水田農業の構造を改革する対策の確立
▽セーフガードの本格発動と新たな野菜対策の確立
など7項目で、果樹、畜産・酪農、麦・大豆作、畑作の対策とWTO対策に及ぶ。
 またJR東日本グループ企業による米国産冷凍弁当の輸入販売中止を求める決議も採択した。

 武部農相は「自給率45%を目ざして集中的に政策を実施していく」と語り、また自民党総合農政調査会の堀之内久男会長は「経営所得安定対策は、品目対策で足りない分を補てんするのだから当然、2階建てとなる。また新たなコメ対策は8月下旬から党内で検討に入った」と語った。

 来賓では、全国消費者団体連絡会を代表して神田敏子さんが「小泉内閣の構造改革で失業者が増え、所得が下がれば、農産物に対する消費者の低価格志向はさらに続く」と述べ、政府・与党の構造改革論とは対立する論旨となった。

 このあと決意表明が始まったが、その時には壇上の来賓席に国会議員の姿はほとんどなく、神田さんだけが目立った。


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